第1章 産声を上げた日
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初めて地に足をつけた少女、否、リヴィは生後何分と経たないものの5歳から7歳ほどの容姿をしていた。
歩くという行為に慣れていないのが窺えるほどにおぼつかない足取りはなによりまだ生まれたてであることを意味していた。
【実験は、成功だ。】
少女は見知らぬ言語に首を傾げた。とはいえそれを “知らない言語” として処理した自分の脳内には別の言語、“知っている言語”が絶え間なく浮かんでは消えていく。
《苦しい》《不快だ》《気持ちが悪い》《疲れた》《誰》《嫌だ》《私は》《敵だらけだ》《どこだ》《しにたい》《アホ言うな》《ああ》
《嗚呼》
《此処は、何処だろう》
そんな心境など露知らず、拍手喝采を浴びせる多くの研究員たちに、ひどく吐き気を催したことを覚えている。
これは後に、マザートリガーになるべくして生まれ、旅人としてその運命に逃れる少女が生まれた日の話である。
2022.2.3
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