第15章 青の日々 (及川徹)
階段をかけのぼると教室にたどり着く途中の踊り場で2人が話しているのを見つけてなぜか隠れてしまった。
『すみません、友達とご飯食べてて…待たせちゃいましたよね』
「あ、いや俺もさっきまで食べてたからちょうど良かったよ。」
『それなら良かったです。わざわざ1年フロアまで来てもらってありがとうございます。』
「…俺が会いたかったからいいんだよ。はいこれ、昨日言ってたキーホルダーね。」
『わあ…かわいい…っ』
聞こえてくる会話に耳を傾ける。
受け取ったキーホルダーを手に目を輝かせるちゃん。俺はあんな顔を向けられたことがないから胸が締め付けられる。
「喜んでくれて良かったよ。じゃあ、そろそろチャイムなるから行くね。」
『はい、ありがとうございました』
行くね、と離れ難そうにちゃんを見つめる先輩の目がすごく優しくて。本当に好きな人を見る目をしてる。俺の方が好きだよって後で絶対言ってやるんだから。
「…あ、あのさ。」
『はい?』
「連絡先…とか聞いてもいいかな。」
『あー…』
「…自分のこと諦めてない男とか嫌だよね。」
そーだそーだ!断っちゃえ!
『あーいえ、私あんまり携帯見なくて…』
「それでもいい!…から、だめかな?」
俺だって苦労して手に入れたのに!
ちゃんの連絡先!!!
『いいですよ。』
あああああああ!!!!!
嘘でしょ何でよ!!
俺と岩ちゃんしか登録してないのに!
「ありがとう!絶対連絡する!」
『返事はあまり期待しないでくれると助かります』
「それでもいいから!ありがとう!」
じゃあ、と3年フロアに帰っていく先輩に手を振る彼女。それすらモヤモヤとして階段の影から飛び出した。
『…っ及川?いつからいたの』
「多分最初から…ごめん。」
『別に聞かれて困ることじゃないからいいけど今度からいるなら出てきて』
「え、いいの」
『だって及川今すごい顔してるよ』
近づいた彼女が俺の顔を覗き込む。
それから小さな手が頬に触れた。