第15章 青の日々 (及川徹)
やばい先輩泣き出しちゃったよ…どう考えても俺が悪いんだけどさ。話聞いてなかった俺が悪いんだけどさぁ…!!
でもでもだって!
まだあの2人話してるんですけど…!おかしくない!?フラれてるんだとしてまだ会話してんのおかしいよね?え、付き合ったの?違うよね?違うって言ってよぉお!!
「及川くん…!」
「は、はいっ」
「もう1回言うから聞いてくれるかな…」
「もち、ろんです…っあの、良かったらこれ…」
ハンカチを差し出すと彼女がそれを受け取って両目を見開いた。
「これ…及川くんの?」
「…?はい、」
「ありがとう…優しいね…っ」
「いえ、俺のせいなんで…」
もうこのハンカチはいいや。この人にあげよう。
「えっと、それじゃあもう1回言うからちゃんと聞いててね?」
「はい」
ハンカチをきゅっと握りしめた彼女はもう一度口を開く。
「バレーをしてる及川くんを初めて見たとき、かっこよくて好きになっちゃったの。私と付き合ってくれないかな…?」
あー…これをちゃんに言われたら天にも昇るほど嬉しいな。とか考えてる時点で他の女の子とどうとかは全く考えられないや。
「及川くん…?」
「気持ちは嬉しいです。伝えてくれてありがとうございます。」
「うんっ」
「でも俺…すごく好きな子がいて。その子じゃないとダメなんです。」
「でも彼女はいないって…」
「はい、これから彼女になってもらう予定なんです。その子が俺以外の誰かと付き合うとか考えただけで無理なんで。」
「わ、私の方が及川くんに尽くすし、合わせるし、浮気とか…絶対しないよ??」
「俺が彼女に尽くしたいし、合わせたいし、目移りなんてさせないくらいいい男になるから大丈夫です。だから先輩の気持ちには応えられないです。」
「…っう、うわぁん…っ」
また泣かせちゃった。
「…そのハンカチは俺に返さなくていいですから。」
しくしくと肩を揺らす先輩を見ても不思議と心は動かない。俺の意識はずっとちゃんに向いたまま。
てかなんか盛り上がってるまでない?嘘でしょねえ、、。本当にむりなんだけど!!!
「わ、たし…及川くんのこと諦めないから…っ」
それだけ言い残して走り去っていった先輩を追いかける気になんてなれず、ちゃんたちの会話に耳を澄ませる。