第15章 青の日々 (及川徹)
「おはようちゃん!どうかした?」
下駄箱の中から出てきた手紙のようなものを読みながらゆっくりと上履きに履き替える彼女。
『はよー及川。ううんーなんでもなーい』
「なんでもなくないよラブレターじゃん。何回目?」
入学して数ヶ月だというのに何度目の告白をされるのだろうか。この子は。
『及川の下駄箱にも昨日入ってたじゃん。今週2度目のラブレター。』
「俺は全部断ってるよ?君というフィアンセがいるのによそ見なんてするわけないじゃん。」
『及川のフィアンセになった覚えがないんだけど』
「絶対振り向かせるからいいんですぅ!ていうかその告白絶対断ってよね!」
『及川に関係ないでしょー』
「関係なくない!好きな子が告白されるなんて気が気じゃない!」
『モテモテ及川でも不安になったりするんだね』
「3年前から好きって俺ずっと言ってるよね!?」
『うん』
「こんなに好きなのに他の男にとられたら発狂する!」
『ははっ、それは困るから断ってくるよ笑』
「ぇあ、う、うんっそうして!!」
俺のため?なんて思っちゃうのは都合のいい解釈でしかないんだろうけど。それでも俺は嬉しかった。元々断るつもりだったのかもしれないけどね!?
思えば俺はハッキリとフラれてはないんじゃないかと考えをめぐらす。ありがとう、ってそれだけ。無理とか嫌とかごめんなさいとか。所謂フラれる時のセリフはまだ聞いた事がない。
あ、え、これって脈アリ?
脈、アリってやつですか?
そっか!俺まだフラれてないんだ!!
保留ってやつだ!!!
「あ、あの及川くんっ」
「お、びっくり」
ちゃんを追いかけようと1歩踏み出した瞬間、目の前に立ちはだかった女の子。上履きの色からして2年生?かな。知らない先輩だ。
「これ…っ」
「ぇあ、ちょっと…!」
小さなメモみたいなものを押し付けて走り去っていってしまった。なんだったんだ…
メモを開くと多分これは告白のお呼び出しってやつ。
『モテモテですね〜及川くーん』
「そんなんじゃ…ってこれちゃんが貰った手紙と指定場所一緒なんだけど」
2人とも揃いも揃って部活後の校舎裏、花壇のある場所。そんなことある??