第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
ああ最悪だ。本当に最悪だ。
こんなことならあの時帰らせなきゃ良かった。
電話を切ってくれって懇願するちゃんの手が届かないところに携帯電話があったんだろうな。通話ボタンを押したのもきっと男の方。俺に聞かせるために。ほんと性格どうなってんの。
「もう…っなんでおさまんないの…」
俺に、俺だけに向けられる日が来ると思ってた嬌声が耳から離れない。思い出すだけで硬くなっていくソコへと無意識に手が伸びる。
「は、ぁあ…っくそ」
おさまる様子なんて微塵もなく勃ち上がるモノに手をかけて頭の中であの男を自分とすり替える。そうすればあの嬌声も懇願するような掠れ声も透き通るような肌も何もかもあっという間に俺だけのちゃんになる。
「ん、ん…ほんとさいあく…ぁ、あッ」
込み上げてくる射精感に逆らわず思い切り欲を吐き出す。これがちゃんの中ならどんなに幸せだろう。あの真っ白な肌を俺で汚したいとさえ思うのに…絶対俺のものにする。あんな男じゃなくて俺だけを見て。
次の日、昼過ぎのバスで帰る俺たちを同級生が見送りに来てくれた。
2人がけの座席。
少し気まずそうな彼女が口を開く。
『す…なくん…昨日は本当にごめんなさい…っ』
「なんでちゃんが謝るの?」
『聞きたくもないもの聞かせた、から…』
「ちゃんは何も悪くないよ。それに彼氏さんは見送り来ないんだね。」
『…夜中に目覚ましたときにはもういなかったから何処にいるのか分からないや。』
「なに、それ…俺なら絶対…っ」
俺なら絶対目を覚ますその時まで抱きしめてるのに。執拗いくらいの愛をあげられるのに。
『気遣わせてごめんね』
「謝らないでよ。あっちが悪いでしょ。」
『角名くんは優しいね』
優しくなんかない。いつ奪ってやろうかってそんなことばっかり考えてるんだから。
そこから兵庫まで戻る間、俺も彼女も昨夜よく眠れなかったのか途中のパーキングエリアにも気が付かずぐっすり寝ていた。目が覚める頃、外はもう暗くてちゃんの表情も緊張が解けたようだった。