第8章 幸せな夢
マイキーが姿を消して10年
一虎の出所日に
オレはリンのマンションへ行った
(……彼女は場地の仇を取るだろうか………それとも…失敗して泣きながら帰って来るのだろうか……)
どちらにしても
今夜、リンが自分で命を絶つつもりでいることを
オレは感じ取っていた
(……オマエをひとりで逝かせたりはしない……)
この日を待っていたのは
オレも同じだった
薄暗いマンションの部屋の中
ポケットから取り出した拳銃を見つめて
" 終わりにしてもいいか " と
彼女は泣いた
『………明日から………何のために生きればいいのか…分からないんです……』
「……」
" やっと自分の想いを告げられる時が来た "
そう思ったオレに
彼女が最期に言ったのは
『助けて』という言葉だった
大切な人を次々に無くし
愛する人も姿を消した
場地の復讐として一虎を殺すことは
ただひとつ残されていたリンの "生きる意味" だった
それも果たせず
全てを終わらせようとしたはずの彼女が
それでもなおオレを頼ったのは
" まだ諦めたくない "という気持ちの表れなのだろう
(……絶望の底で生き続けることを…オマエが望むなら……)
気が付くと
オレはリンを抱きしめていた