第5章 近付いた距離から変化は訪れる
若葉から教えてもらったのは浦風 天音(ウラカゼ アマネ)だった。
彼の事もあまり知らないものの、好戦的で常に強さを求めているイメージを結莉乃は持っており声を掛けるのに気合いが必要だった。
天音
「ンだよ、アンタ…見ねェ顔だな」
更に眉間に皺を寄せて天音は結莉乃を鋭い目付きで見下ろす。結莉乃は拳を握り天音から視線を外さなかった
天音
「あー…思い出した。屋敷で世話する事になったっつー奴か。オレに何の用だ」
結莉乃
「浦風さんが一番強いと聞きました!今度、私に稽古つけてください!」
思い切り頭を下げてお願いする。予想外の言葉に天音は一瞬驚いた様に固まった。が、次には馬鹿にした様な笑を零した
天音
「ハッ。女が刀持とうなんざ考えンな。アイツ等に守られて大人しくお荷物やってろ」
結莉乃
「そんなの嫌です」
天音
「あぁ゙?」
結莉乃
「人を守りながら戦うのって凄く大変だと感じました。それに、もしも私に何かあったら自分のせいでって思わせてしまう…私はそんな風に思わせたくないです!」
天音
「だがよォ、向き不向きってもンがあるだろ」
結莉乃
「そうだと思います。…でも、私には怪我を治す事しか出来ません。それだってまだ確実じゃ無い…。彼等が危ない時、微力でも力になりたいんです」
不機嫌と嘲笑う空気を含ませたまま浴びせられる言葉に、結莉乃は負けないように自身の思いをぶつけていく。沢山の異形を倒したいとかは考えておらず、自分の身は自分で守る…その思いとは別にせめて少しでも異形の数を減らしたいと、そう思ったのだ。
天音
「………」
結莉乃
「それに…初めて刀を持って対峙した時、私は動けなかった。死ぬかもしれないのに、ぐるぐる色んな事を考えちゃって…結局また守ってもらってしまった。一瞬の隙が命取りになる…迷わない覚悟を持ちたい」
身を庇ってもらったのではなく、慎太が名前を呼んでくれたおかげで考える事を止めて刀を振れた。決めた覚悟が消えそうになって、初めて受けた痛みで改めて出来た覚悟を…迷わずずっと持っておきたかった