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満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】

第44章 第三者の恋心《宇髄天元》










「ーーし、終わった!ーーー澤む…」

ら、と声をかけようとしたが、は、と止まってしまった。
窓の外の校庭を見る横顔が、あんまりにも綺麗だった。
うつ伏せた瞼からの長いまつ毛は夕日に透けて、色白の頬はどこか桜色に染っている。
深く見つめるような真剣な眼差しの横顔に、一瞬釘づけになってしまった。

澤村の視線の先は一体何があるのか、同じ方向を捉えると、銀髪の派手な男が、女生徒に囲まれていた。

ウズセン、?

どうやら澤村は美術教師の宇髄先生を見ている。どこか不安気で寂しげに。
きゃらきゃらと笑う女生徒相手に、呆れたように、けどどこか楽しげに談笑している。
ウズセンはその派手なよくわからん飾りと化粧をしていて本当に教員かよと疑うが、生徒との距離は近く頼れる兄貴のような存在の先生だった。
よく昼休憩にバスケに参加しては本気で相手してくれて楽しんでくれて、そして女生徒から黄色い声援を存分に受けている。

そんな宇髄を、澤村は食い気味に見つめている。

「ウズセンってさ、すっげえモテてるよな」

そう声をかけると、澤村はハっと我に帰りこちらを振り向いた。

「…ね。モテモテだよねえ」


あれ?やばい。悲しませている。
と思った。
ふふ、と困るように笑った澤村の、
伏せた目は悲しみ感情を垣間見せている。
でも、なんで、どうして。

こういう人の気持ちというのは、幼い頃から理解できる方だった。
どう言えば傷つけるのか、嬉しがるのか、誰のことが好きだとか、そういうのを表情や声質や目線で、汲み取るのが得意な方だった。

澤村って、もしかして。
あーー…そうゆう、こと。
昼休憩、校庭の方を見ていたのは、
俺ではなくて、宇髄の方を見ていたのか。

腹の奥底で沸いた、少しの苛立ちと悲しみと、宇髄に対する嫉妬を押さえ込むように、プリントとノートを片付けて行く。

「あ、あとやっとくよ!もう先生のところへ持って行くだけだよね?」

「ーーあぁ。じゃあ俺、美術の課題持って行くわ。バスケ部の部室が近いし」

ーあとは頼める?と澤村を見つめる。
これは小さな意地悪だった。
宇髄に会わせたくはない、そんな虚しい抵抗だった。

「えっ…あ、そっか。わかった。ありがとう」


悪いことしたな。残念そうな顔を一瞬した澤村に罪悪感を感じたが、美術のプリントを受け取った。



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