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満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】

第31章 答えはでない《不死川実弥》



第二校舎3階にある数学準備室は、西日が当たらずにひんやりとしていた。
放課後のここ校舎は、シンと静かである。

クラスメートたちの数学のノートを抱えながら、数学準備室のドアをノックした。

「…失礼します、…不死川先生」

こちらに気づいた不死川は、頬杖をつきながら目線をノートパソコンから上げた。

「入れェー」

あ、はい…とおずおず部屋に入る。

不死川はまた目線をノートパソコンに向けて作業を続けている。
波奈はパタンとドアを静かに閉めて、
数学のノートを指定の場所へと積み上げた。


「…ノート、置いときます」

「…ごくろーサン」

くるりと踵を返して波奈は帰ろうとしたが、

「ちょっとまて」と不死川に呼び止められた。

波奈は え、 と言って振り返って、不死川を見る。
不死川は、
「…コーヒーでものむかァ?」
と気まずそうに言った。

「のみ、ます」

「ん」

立ち上がりケトルに水を入れている。
その背中を見ながら、波奈はソファーに腰掛けた。

この部屋に来ることは、1ヶ月に一度、あるかないか。
さらに一緒に何かを飲んだり食べたりすることは、ごく少ない。
電話はごくたまに。メールのやりとりも本当にたまに。
土日以外は学校で会えるけど、それは生徒としてで。

恋人と呼べるかわからないけど、
コーヒーをいれて一緒に飲めるなんて、波奈にとってはとても特別で、嬉しい。

渡されたコーヒーは、ミルクとお砂糖がたっぷり入っていた。
子ども用の、波奈のためのコーヒーだ。

一口飲んでホッとする。
ふう、と息を吐くと、不死川は波奈を見つめてまたフッと笑う。

波奈はキュンとしてしまって、慌てて目線を変えた。


「…小テスト、」

「え“!」

波奈はギクリとして声が上擦った。

「その顔はァ、心当たりあんのかァ?」

「え、そんな、悪かった、ですか?」

「いや…わるかねェけど、お前にしてはケアレスミスが多かったし」

不死川もふう、と息を吐いてコーヒーに口をつけた。

「…授業中も集中してなかったみてェだし、…」

ことんとマグカップを置いた不死川は、
波奈のほうへ身体を向けた。
それから大きな手が、波奈の頭をポンと撫でた。

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