第20章 彼女の能力
「・・・・ねぇ、エース。私、今から、旅に出ようと思うの」
「?」
「弟に、もう一度会いに行って、さよならを言いに行こうと思って」
一緒に来ない?と誘われ、エースは胸の蟠りを取り消すべく、長めに息を吐いた。
そして、付き合おう、と言うエースには、先ほどまでの暗い光はなく、いつものエースに戻っていた。
そのことに安堵するユキは、首にかけていた弟の形見である、ペンダントを握りしめた。
「・・・これね、昔弟が浜辺で拾ってきた石で作ったの。私の瞳と同じ色だって嬉しそうにつけてた。私の分は、無くしてしまったけど・・・これで、弟にまた会いに行ける」
「・・・?形見があれば、いけるのか?過去に」
「えぇと、本来なら人に触れることで、その人の過去に行くことができるの。だけど、その人が常に持ち続けたものや、生きているものなら、そこからでも過去へ飛べる。つまり、記憶があるものからなら、私はどこへでもいける」
「ほお、そりゃますますすげぇ」
「・・・だけど、どんな過去があっても、私は何にも干渉できない。会話することはできるけど、未来に関することを話すことはできない。時の番人がいるの。だからエース。これから何をみても、何もできない。それを、覚悟して欲しいの」
真剣な表情で見つめられ、エースはわかった、と強く頷いた。
しかし、エースは干渉できないと言うことがどれほどのものか、まだわかっていなかった。