第29章 部屋
「エース!ここって」
「おう!今日からお前の部屋だっ。ふつーならクルー達と一緒に大部屋なんだが、マルコに頼んで1人部屋にしてもらった」
喜べ、と開けられた部屋には住むには充分の広さで、ベットとテーブル、そしてシャワーとトイレが付いていた。部屋に向かう際、ここは1600人以上もいる大所帯で、男ばかりだと聞いていたので、正直シャワーが心配だったユキだが、まさか全てついている部屋を与えてくれるなんて、と部屋を用意してくれたマルコさんに後でお礼を言おうと決めるユキ。
「どうだ?気に入ったか?」
「うんっありがとう、エース!」
にっこりと笑うその笑顔に、エースはその頭に手を乗せ心配そうに覗き込む。
「大丈夫か?」
「・・・え」
「・・・随分無理させちまったな・・・悪かった。俺のわがままで」
一瞬何のことか分からずにユキは素っ頓狂な声をあげてしまったが、すぐにエースのその言葉が何を意味するのかわかりユキは苦笑した。
「・・・エースはなんで分かるんだろうね。私も気づかなかったよ」
そう言ったユキはガクリ、と足を折った。地面に落ちる前にエースが支えてくれ、すぐにベットに座らされる。一小娘があの巨体の戦士の威圧に耐えられるわけがない。根性でなんとか立っていたのをエースは見抜いていた。申し訳なさそうなエースの表情に、ユキが心配しないで、と言う。
「・・・・大丈夫。あの白ひげさんは、いい人って知ってる」
「?妙な言い回しだな。お前、オヤジに会ったこと、あんのか?」
エースがそう尋ねると、ユキは答えの代わりに懐かしそうにその瞳を細める。それが何を意味しているか分かり、エースはポカン、とした。そんなエースに、ユキはその細い人差し指を唇の前に立てる。
「・・・・・・内緒、ね?」
「っ」
一瞬、エースに向けられたその悪戯っ子のような笑顔にドキリとする。