第8章 想い人
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電話口で泣きながら“逢いたい”を繰り返す君
(一体なにがあったの?)
「…今お家?」
『……ん』
「…今から行くから、待ってて」
『…え?…だって、翔くん仕事中…』
そんな事はどうでもよかった
「智くんのが大事」
俺の大好きな愛しい君が、泣きながら逢いたいって言ってるのに
それ以上優先される事なんてありゃしない!!!
『ご、ごめん翔くん、僕、大丈夫だから…』
「駄目、どのみち気になって仕事にならないから」
『ごめんなさい…』
「謝んないで、俺嬉しいよ…智くんが逢いたいって言ってくれて…
…俺だって逢いたかった…今だって智くんの事考えてたんだから」
『…翔くん…』
「待ってて、すぐ行く」
『…ん、待ってる』
(智くんが!智くんが呼んでいるんだっ!!!)
俺は、テキトーな言い訳を吐き捨てて、会社を飛び出した
(待ってて!智くん!今すぐ行くから!!)
「貴方がすきだからぁ!!!」
(…やばい…興奮しすぎて口に出しちゃった(汗))
道行く人の冷たい視線を感じつつ、俺は君の元へと急いだ
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