【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
アパートを出て、映画館へ行くために地下鉄に乗る。
バスでも行けるけど、地下鉄の方が早い。
平日のお昼頃な為か、人通りが少ない。
ICカードをタッチして改札を通る。バッキーはカードは持っていないらしく切符を買っていた。
タイミングが良かったようで、すぐにホームに電車が滑り込んで来た。
電車内も人が少なく、シートも空いていたけど、たったの一駅で映画館のある駅へ着くため、そのままドア付近に立つ。
壁を背に立つと、その前をバッキーが囲うように立った。
…もしかして守ってくれている?
電車内にはまばらに人がいるだけで、人波にのまれることはなさそうだけど、バッキーの立ち方はまるでわたしの立ちスペースを守るようなものだった。さらりと紳士的なバッキーに感動する。
『映画館の席、どこら辺が好き?』
「…特に考えたこと無かったな…」
『そっか』
「ミアは?」
『わたしは1番後ろの席かな』
「へえ?」
『画面全体が視界に入れやすくて首も痛くならないし、人が後ろに居ないから安心するというか…』
「ああ、なるほど。それはわかる」
思いのほか、バッキーが頷いて同意してくれた。
電車が目的の駅に着く。
改札を出て階段を上がって、少し歩けば映画館だ。外観には公開中の映画や今後公開予定の映画の広告ポスターや電光掲示板が掲げてある。
そのうちの1つに、今日観る予定の映画も見つけた。
チケットを買って、何か持ち込みの飲料やフードを買うか悩んでいると──────
『わっ、』
ぽすん、とわたしのお尻に何かがぶつかってきた。
わたしの声にバッキーも一瞬驚いた顔をしてわたしと同時にわたしの背後を見た。
わたしのお尻に当たって、しがみついていたのは小さな男の子だった。
パッと顔を上げた男の子の表情が明るいものからみるみる眉を八の字にして青ざめていく。同時にサッとしがみついていた手も離された。
もしかして…お母さんと間違えたのかしら
『大丈夫?』
男の子と視線を合わせるようにしゃがんでみても、困惑している様子の男の子は口を開かない。
「迷子か?」
『多分…お母さんと間違えちゃったのかも』
バッキーは立ったままキョロキョロと辺りを見渡す。