第5章 天才じゃない
「早いわね」
「今来たところですよ」
更衣室で着替えようと思って荷物を漁っていた
あれ?
「どうしたの?着替えないの?」
「じゃ、ジャージ教室に忘れたみたいなので取りに戻ります」
朝練の時は着てたしちゃんとあったもん
どっかに落としたのかな
私は更衣室を出て急いで教室に戻る
いつ出した?出してないよ…じゃあどこに?
「さがしものってこれ?」
「それ、です…どこに置いてありました、?」
ジャージを受け取ろうとしたら上に挙げられて取れなかった
「返して…」
「男に囲まれた生活はどう?楽しい?」
「え、?」
「彼氏いるのに他の男にも媚び売ってるって本当?」
「そんなことしてな…」
「バレーでも贔屓されてたとか」
「いいよね、天才は。努力なんてしなくても媚び売るだけでレギュラーとれてたんでしょ」
「努力してた人たちが可哀想〜」
ケラケラ笑ってくる
悪口がもっと聞かされるそう思ったら逃げたくて高く上げられたジャージをジャンプして取り返して走って逃げた
更衣室に入ってすぐ力が抜けてその場に座り込んだ
溢れそうな涙をこらえてジャージを強く抱きしめた
「徹………私は天才じゃないよ…」