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初音ミクの消失

第1章 1 初音ミクの回想


「ここが僕の部屋だよ。」

彼の部屋は、一言で言えないくらいに物でごった返していた。
窓際にはギターが立てかけられており、その隣には机や椅子。
さらに沢山の音楽機器。
それから、アニメやゲームのフィギュアにポスター、それからゲーム機に漫画。
整理整頓はきっちりしてあるものの、それ以上に物の多さが目立つような、そんな部屋だった。

「それで、こっちがpcとか、機材が置いてある部屋。
よし、じゃあ早速…。」

(ようやくか…)

彼は、初音ミクが入った箱に手をかけた。

「開封…!
っくううううう…僕もようやく…ミクさんと一緒に生活できるんだ…!
あああああああやばい興奮がおさまらない…ああああああああああ…やばい死にそうなりいいいいいいい…!!」

(…典型的なヲタ…ここで死なれたら困るんだけどな…)

よぉぉぉし早速!と独り言を呟きながら、彼はパソコンに向かった。
カチ、カチ、と興奮で震える手でパソコンを操作する。

「ぃぃぃいいいきます!!
せいやぁ!!!」

「…プログラム起動中…エラーが発生しました。
もう一度試します。
プログラム起動中…成功しました。
これより、プログラムを開始します。」

ブォンッ、と音がして、初音ミクは現れた。

「み、みみみみみみみミクさんが…しゃべってるぅぅぅぅぅ…!!!」

興奮が抑えきれない声で、彼は…いや、初音ミクの新しいマスターは喋った。

「はい、私は初音ミクです。
ミク、とお呼びください。
…マスター。」

そんな様子をみた初音ミクは、にこやかに、そして少し恥ずかしそうに。
初めて、彼をマスターと呼んだ。

「みっ、みみみみみみあああああああだめだ尊いこれは尊いの過剰摂取ううううううあああああああああだめだだめだマスターはだめほんとに心臓に悪いいいいいいいいいいいいいいいいいいああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」

その瞬間彼は、狂ったセミのように叫び、ジタバタと暴れまわり、ついには頭を壁に打ち付け出し、そして蠢いていた。

「マスター…大丈夫ですか…?」

若干狂っているような気がしますけど、とは言わなかった初音ミクは、引き気味にそう言った。

「うん!!大丈夫!!心配しないで!!
…えっと、その、ミク!」

彼は血が出た頭をさすりながら、初音ミクに心配させまいと笑顔で、初めて初音ミクをミクと呼んだ。

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