第4章 第四章音楽の申し子
ノースメイヤでは素敵な出会いがあった。
厄介な出会いもあったけど、おとぎの国と呼ばれる国で素敵な王子様に出会った。
彼とは王立学園で知り合い、その後私が執事になる事になった後に春樹に紹介された。
絵に描いたような王子様の見た目に反して色々ぶっ飛んでいたけど、男装執事になることを望んだ私に色々教えてくれたのは彼だった。
今頃どうしているだろうか。
私が日本に帰国した後は手紙のやり取りをしていたけど。
でも、私が日本で現在の店。
LOYAL GARDENの経営に携わるようになってからは連絡をまあり取らなくなった。
そして春樹から二年前に手紙を送って来てから音信は途絶えてしまった。
手紙と同封されていたのは楽譜だった。
完成されていない未完成のままの楽譜の全てを完成させてある人に渡して欲しいと書かれていた。
私はまだ完成させることができずにいる。
完璧な形でこの曲を完成させなければならない。
あの日に心を壊したあの人の為に。
優しかったあの人は夢も居場所も失い、光を失ってしまった。
だから、変わってしまったのだろうか。
叶えられなかった夢を別の人に託し、夢を追い続ける事に躍起になり、一番大切な事を忘れている。
春樹は大切な思い出を抱きしめたまま、誰かを恨むことも傷つけることもしていない。
互いに思いは同じなのに――。
「道はそれ違ってしまっても…また重なる日が来るのかな?この空のように」
私はまだ見果てぬ夢を抱きながらもう一度道が重なる事を願わずにはいられなかった。
「おい佐伯!」
「はい?」
感傷的になっている私を現実に無理矢理引き戻したのは彼だった。