第4章 第四章音楽の申し子
その日から九条さんはやたらと私を監視するようになった。
今まで以上に私の傍にいるようになったし。
休憩時間の合間も無言で何かを訴えているようだった。
「ちょっと千早、アンタ天に何したの?」
「正確には顎くい、されて壁ドンをされたんですけどね?」
「はぁ?何言ってんのよ」
呆れる表情をする姉鷺さんに今度の企画書を差し出し。
「お納めください」
「あら、早いのね」
「何事もスピード命です」
十さんのソロ活動に携わった私は八乙女社長から今後、TRIGGERのプロデュースの全権を任されたのだ。
「社長も口ではああいったけど、アンタの事は認めているのよ?なのにあんな言い方」
「解ってます。出過ぎた事だと…でも、あのままではいつか社長は後悔します。タレントに対してある程度突き放したとしても…やり過ぎです」
「アンタ…」
「TRIGGERを愛しているのに。その態度を見せなさすぎる。共演者スタッフもTRIGGERを引き立たせるだけの存在にして、大切にしないと。この仕事は人を大切にしないと成り立ちません」
八乙女社長は所かまわず恨みを買いすぎている。
その結果、業界では恨んでいる人が多すぎるのは嫌でもあわかる。
「お父さんが恨みを買えば、火の粉を被るのは誰です?」
「楽ね?」
「はい、しかも彼はいい意味でも悪い意味でも真っすぐすぎる。世渡りが下手過ぎる直情型です」
それが彼の魅力でもあるのかもしれないけど。
「彼のように恵まれている環境を妬む者にとって、歌まれる材料を増やすのは危険です。できれば恨みは少ない方が良い」
「普段から楽と喧嘩ばかりしている癖にちゃんと見ていたのね」
「私から吹っ掛けたことはありませんが」
「ちょっと、どの口が言うのよ」
多少の厳しい言葉は浴びせたけど、可愛いものだと思うけど。
「私が以前担当したアイドルよりも優しいと思いますけどね」
「そういえば、アイドルのプロデュースをしていたのよね?」
「はい、とあるタレントをプロデュースしたのがきっかけで私はアイドルのプロデュースのやりがいと面白さを知りました」
私にプロデューサーとしてのきっかけをくれたのはあの二人だったのかもしれない。
「とっても素敵な子達でした」
一時でも思わない日はない。
彼等の事を。