第4章 第四章音楽の申し子
【天side】
この言葉、どうして――。
『天、僕は君は僕にとって花だ。プロデューサーにとってアイドルは子供で、可能性を引き出す為の存在、花が咲けるように水を与える…僕は君の可能性の花を咲かせてあげる』
九条さんが何時か、僕に行ってくれた言葉と同じ。
どうして彼が!
「くだらん」
「何時かそんな真似をしていると、痛い目に合いますよ。子供は愛情をかけないと答えてくれない。タレントに真摯に向き合えない人間にタレントを指導する事は出来ません」
「貴様ぁ!」
彼の言葉、一つ、一つが九条さんの言葉と重なる。
これまで感じていた違和感は合った。
九条さんと何処かに通うような部分があって、でも根本的な部分は似て非なる者だったけど。
「社長!」
「親父!」
社長がプロデューサを殴るかと思った。
でも、プロデューサは顔色一つ変えずにただ真っすぐに見ていた。
「私は私のやり方がある、正解は一つじゃない」
「今回は見逃してやる。だが次ないと思え」
「待ってください社長」
結局、折れることになった社長はその場を後にした。
「千早君!大丈夫かい」
「お前馬鹿だろ!親父にあんなことを言うなんて」
「行けませんか?」
普段から万華鏡のように心の中が見えない彼は本心を見せない。
僕達に壁を作っていて、境界線を作っていたのに。
「私はタレントを侮辱するなら誰であろうと許しません。私は自分の誇りを貫いただけ…非難されるいわれもありません」
「お前…」
「それに八乙女社長は、物わかりの悪い方ではありませんよ?少々私が意地の悪い事をしたのが悪い。なのにあの人は最終的に折れてくださった…本当に素直じゃない人です」
「はぁ?何言ってんだ」
「えーっと」
僕は彼の事を知らなかった。
知ろうとしていなかったのかもしれない。
所詮はビジネスパートナーでしかない。
だから、必要以上に関わらない方が良いと思ったけど。
言い訳だ。
知りたいと思ってもきっと彼は教えてくれない。
拒絶されるのが怖かったのかもしれない。
プロデューサーにとってタレントは道具でしかないと何処かで思っていた。
でも、彼はちゃんと僕達に向き合っていたんだ。