第3章 第3章希望の欠片
小さな月が顔を出す。
どんなに欠けても必ず満ちて行く月は何を思うのか。
「今日は満月か」
静かな夜に一人ピアノの前に立ちながらふと思い出す。
幼い頃から見続けていた狭い部屋から見えるお月様。
空を見上げてただ手を伸ばしていた私は小さかった。
それでも小さな世界でも幸せを願い続け、一人ピアノを弾いていた。
そんな私は狭い世界で。
箱庭のような世界で輝くものに出会った。
「わぁ、すごい…君上手だね」
空よりも深い色をもった綺麗な天使に出会った。
「ねぇ、もっと弾いて…」
「うん」
私の世界は現実世界と隔離されていた。
雑音に苦しみ、一人だった私に素敵な音をくれた人がいた。
その人の名前は――。
「俺の名前は万理って言うんだ。君は?」
「佐伯聖」
「綺麗な名前だね」
それが私にとって奇跡のような出会いだった。
私に幸福という時間をくれた人の出会いだったのだ。