第2章 新プロデューサーはイケメン
執事喫茶、LOYAL GARDENはたんなる執事喫茶ではない。
レギュラーとして働いている執事やフットマンはちゃんとして現役執事で、執事学校も卒業した経歴を持っている。
執事喫茶と言えば、誤解を招かれるけど。
彼等はプロで、スキルもちゃんと身に着け本場でも実績を積んでいるのだ。
同時にこの店は執事を派遣する場でもある。
年々日本では執事の質が悪化の一途を辿っているのが現状であるが、外国とは違い執事の数もそれ程多くないのだ。
育てる環境も良くない。
だからこそ、時折彼等は執事学校・アカデミーの講師に招かれることもあれば、大企業からセミナーをして欲しいと依頼を受けたり、旅館やホテルからも御もてなしの極意を学びたいと言う声も大きいのだ。
「マスター、企業からの依頼の資料になります」
「ああ…また増えたか」
「ええ、ショービジネスでも成功をしているマスターの努力の賜物です」
「だが、これ以上は受ける気はない。受ける必要もないからな」
「かしこまりました」
私の秘書的な事を担当してくれている柊に書類を任せる。
「来月の演奏会はいかがいたしますか」
「予定通りに。既に出来上がっているだろう…ぬかるな」
「かしこまりました」
この店を任されている傍らでショービジネスもしているので、経営が危ない店のプロデュースも私がしている。
とは言え、プロデュースのチームがあるのだけど。
「後は、懇意にしている施設と、子供食堂の寄付金はどう?」
「問題ありません。今月の寄付金も滞りなく」
「なら、そのままで…」
そんな時だった。
事務所内でラジオの優先が流れた。
「また流れてますねRe:vale」
「ああ、頑張っているね」
疲れた私に癒しをくれる彼等。
「花束の手配は?」
「完璧です。ですが、また名無しでよろしいのですか?」
「ああ」
私はこの五年間、彼等に名無しで花束を贈り続けていた。
メッセージカードにも絶対に名前を書かずにいたが、恐らく気づかれている。
「お会いになられないのですね」
「ああ、会えば辛くなるだろう?特に百に泣かれるのはキツイ」
私が心を尽くし育てた宝石のような彼等。
もう傍にいることもだきしめてあげることもできないけど、離れてて思いは同じだ。
だからこの距離でいいんだ。