第1章 ぽっちゃり彼女
俺が眉を潜めると、恋次が笑った。
「仕方がないでしょ。藍野の特徴は胸だし」
「あ?」
「知らないんすか?俺らゼミ生は藍野のこと巨乳ちゃんって呼んでたんすよ」
「呼ぶな!」
確かに、美穂子のチャーミングポイントは胸だろうな。
一般的に言えば、ぽっちゃり体型の美穂子の胸は正直、乱菊さん並みだ。
すごく柔らかくて、むにゅーっと絞ったときなんて至福のときだって思うくらいだ。
「でも、胸はあるけど。ほら…ちょっと太ってるほうっしょ?だから、先輩が付き合うって言ったときは…正直、すぐ別れると思ってたっすよ」
「何でだよ」
「……だって、それまでの彼女ってモデルみてーに綺麗な子ばっかだったっしょ?」
「…………」
確かに…俺が大学時代付き合っていた女といえば、顔がいい細身の女が多かった。
その分、胸もそれほど大きくなかったけどな。
いや、本人曰く、Dカップとかあったらしいけど。
美穂子の胸を知った今となっては…そのサイズも盛ってんじゃねーかっと思う。
だいたい、ブラってかなりの高確率で嘘がいっぱいなんだ。寄せられた胸つーのは、それこそ本当に人工的に作られてるんだって思ったくらいだ。
「今は、美穂子一筋なんだから、いいだろ」
「まぁ、そうっすね。一年以上続くなんて、先輩にしては奇跡っすからねぇ」
「うるせー。これからだって続くつーの」
俺は美穂子を手放す気なんて、これっぽっちもねーんだよ。
「そうっすか。じゃ、しつれーしまーす」
エレベーターが一階に到着して、恋次は笑いながら手をひらひらさせてエレベーターを降りていく。
ドアが閉まって、俺は小さくため息をついた。
そういえば、美穂子と付き合って1年以上経つんだな。