第4章 第三章雨の日の秘め事
朝食が終わり一緒に片づけをしてゆっくりすごしていた。
けど、この体制は何故に?
「万理さん、どうして膝の上に」
「髪梳かせないでしょ?」
「うー」
後ろから抱きしめるようにして髪の毛を梳かされるけど恥ずかしい。
「綺麗な髪だね…」
「響がずっと手入れをしてくれていたんですけど…やつぱり切ろうかな。短い方が男装するの楽だし」
やっぱり万理さんにバレた時も思った。
髪の毛を切ってちゃんと染めた方がいいんじゃないか?
「えっ!ダメだよ」
「どうして?」
「こんなに綺麗な髪なのに…俺は長い髪の奏音さん好きだな」
「じゃあ切りません」
「切り替え早いね」
万理さんが好きだって言うなら頑張って伸ばそう。
「それに髪切っても後から響に毛生え薬塗られそうだし」
「毛生え薬…」
私が髪を切ろうとするとこれまで何度も阻止された。
昔にショートにしようとして自分で切ったら速攻でヘアアクセルレーターを着けられ頭皮マッサージをされて大変だった。
「もしかしてケアは響さん?」
「はい、面倒だからシャンプーとドライヤーが良いんですけど。怒られて」
「安易に想像がつくね。君は自分の事は大雑把だもんね」
「大体私は大雑把です。仕事以外は生活力はないです」
「うん、これからは俺はしっかり管理するよ」
これ以上お世話をされてしまうんだろうか?
「いいです。万理さん急がしいし」
「俺がしたいんだよ。本当なら事務所にいて欲しいんだけど」
「契約期間切れるし…それに男装を隠し通せる自信がありません」
一番のネックなのは、私の男装に限界を感じてることだ。
既に鋭いナギが私の正体に気づくのも時間の問題だし、それに本業は仕立て屋だから。
「私、独立を考えているんです」
「独立って自分でお店をするの?」
「はい、三人で最高のサロンを開くんですよ。美容師は響でメイクが律、テーラーが私」
「すごいな」
二人は既に外でも売れっ子だった。
美容師、メイク、洋服のそれぞれの専門を担当してサロンを開くのが夢だった。
腐れ縁でここまで来たけど、二人は今の職業がある意味転職かもしれない。
遠回りをしたけど私も音楽を離れた後も今の仕事が気に入っている。
音楽と離れても身近に感じられる今が好きだから。