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あなたがたった一度の恋でした【鬼滅の刃】

第1章 時柱と水柱の恋物語







昔の私は弱虫だった。


弱くて。


なにも守れない。


ただ誰かに守られるだけのひ弱な存在。


そのせいで大事なものをたくさん失った。








でも今は違う。


生まれ変わった私はみんなを守れる。


そう、私は“鬼殺隊”になったんだから。












「春空様!!鬼がっ!!」



鬼気迫る表情で逃げ惑う隊士達は、背中を向けたたずむ少女の元に急ぐ。


隊士の背後から迫る異形な鬼。


その騒ぎに反応しクルリと振り向いた少女は動揺するわけでもなく隊士を追いかけ回す鬼を、目を細め見据えると腰にある日輪刀の鞘と鍔の境目辺りを左手で握り、親指でぐっと鍔を前に押し出し鯉口を切った。


微動だにしない少女にターゲットをしぼった鬼はもう他の者には目もくれない。


鬼の手と口が目前までに迫り誰もが危ないと思ったその瞬間、目にも止まらぬ早さで柄を握り少女は抜刀した。




「時の呼吸 陸ノ型 落雷・磨穿鉄硯(らくらい・ませんてっけん)!」




俊敏な動きで、その頚をあっさりと打ち落としてしまう。


隊士たちは一瞬の出来事のように感じ目の前でなにが起きたのか把握できなかった。


気が付くと鬼は塵となりその姿を消しつつあったからだ。


少女が刃についた血を薙ぎ払いカチリと鞘に納めた音でハッとする。





「怪我はありませんか?」

「は、はい。春空様のおかげでなんとも」

「そうですか。間に合って良かったです」




ニコリと笑みをこぼす少女。


名は桜。


これは特殊な能力(ちから)を手にした、後の“時柱”と“水柱”の恋物語である。




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