第3章 偽装 ★
『ぶっきらぼうだけど、「気をつけろよ」と彼は言ってくれて、さらに私の手を優しく撫でてくれたの。その時、私は彼に一目惚れしちゃった。今まで一目惚れすることが無かったから、どうしていいかわからなくなって…しかも相手は捜査官。そしたら、貴方が現れた』
降:「僕が?」
『そう。気づいていると思うけど、私はさっきの料亭に行くまで貴方には、ハニートラップをかけようと思っていたわ』
降:「ええ。そうでしたね」
『けど、すぐにそれを諦めた。だって、貴方は私が思っていた以上に、捜査官である私の心を開かせることが、上手だったから。負けたと思った。そして、貴方のその捜査官をも落としちゃうスキルを教えて欲しいと思ったの。けど、不謹慎よね。ごめんなさい』
私はそう告げて、彼から目を逸らした。
ボスが私のことを猪突猛進っていうのは間違っていない。任務じゃないと、私はすぐに思ったことを実行してしまう。今更ながらに、私は自分の行動が浅はかだったと思い始めていた。私は「パートナー」として認めてくれた零さんを利用しようとしている。
話を黙って聞いていた彼だったが、私の迷いを知ってか知らずか、急に私の頬へ手を伸ばしてきた。私はその手を優しく受け止める。
降:「そんなに信用しているんですね、僕のこと」
『もちろん』
この気持ちに嘘はない。私は彼のことを信用している。「仕事上のパートナー」として。
降:「全く、貴女って人は…」
そう言って、彼は私の唇をまた静かに奪っていった。