第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●黒子 テツヤ● 〜校庭〜
本当は、ずっと気になっていた。
顔の知らないその子の中に見えた何かを。
暖かい記憶の中に戻ってきたような。
理屈も根拠もないけれど、ボクがずっと望んでいたものが、形を留めて呼吸を続けているようで。
そんなものが、あの子の中に見えた。
大袈裟かもしれないけれど。
会ったばかりのあの子の中に、何か大事なものが生きているような。
そんな気がしてた。
だから背中を追いかけた。
ボクが欲しているものを、あの子は持っているように思えたから。
でも。
いま思えば、ただの勘違いかもしない。
確かな目的を持って誠凛高校への道のりを歩んでいたボクが、勝手に自分の熱を周囲にも波勢させていただけで。
春の陽気に惑わされたのか。
それか。
朝から帝光中のことを考えてしまったせいか。
その流れ弾を受けた、その時一番近くにいた人に、勝手に投影してしまったのかもしれない。
だから女の子は、ボクみたいに確かな目的とか。
後悔から生まれた情熱とか。
そんなものは全くなくて。
今日この日を純粋に待ちわびていた、普通の15歳の女の子で。
本当に、たまたま。
ボクの横を通って行っただけ。
そうだとしても、ボクがあの子を気になる理由。
また話したいと素直に思ったのは。
それは単純に、顔と年齢以上に、もっと知りたいことがあるからなんだと思う。
きっとそうなんだと。
そう思いたい。
だから、教室は同じだったら嬉しい。
吹奏楽部に勧誘されているあの子が、先輩の説得で吹奏楽部に入部するのか。
それとも別の部活を選ぶのか。
今はそれすらも気になってしまう。
だから、今度こそちゃんと話したい。
ボクの宿望を投影した姿ではなく。
次に会えた時ボクは。
歳上だと純粋に勘違いしてしまった、その時の気持ちのままでいるから。
本当のあの子の話を聞きたい。
必ず、ちゃんとした形で会いに行くから。
その時は、話してくれたら嬉しい。
さて、ボクもバスケ部のところに行くとしましょう。
入部できなくては、本末転倒ですから。
バスケ部のブースを探しながら、改めて小説を開きなおす。
「あれ。」
ボク、どこまで読んでいたんでしたっけ?