第6章 偶然目があっただけ
●藤堂 天● 〜1年B組〜
だからこそ、やっぱり私が怪我を把握してやらなきゃって。
友人は「それで(が)いい」って思ってるのかもしれないけれど、怪我したままで良いわけがない。
だから本気で呼び止めるつもりで。
徐々に遠くなっていく友人の背中に向かって、少しばかり声を張ったんだ。
『念のため保健室に』
「保健室に行った方がいいんじゃ」と続けようとする私が、言い終わるよりもずっと早く。
扉の前に辿り着いた友人は、無傷の右手で引き戸へと手をかけ…
力を加えられた扉は“ガラガラガラッ!”っと大きめに音を立て。
レールの端まで辿り着くと、“ピシャンッ!!”という音を鳴らしていた。
そして、
?「大丈夫大丈夫!!」
扉の先に待つ廊下に進む代わりに。
顔だけをこちらに向けて、友人は私にそう言ってきた。
その時に見た友人は、赤い顔のまま。
アハハッ…!と小さく笑っていた。
やっぱり、どこか困っているよう笑うのは、嘘をついているからなのだろうか?
それとも、友人の癖なのだろうか?
2つを合わせたら、“嘘を付くときの癖”ということになるのだけれど…
それが事実がどうか、確認させてはくれないらしい。
なぜなら、そう考えていた時にはもう。
友人の体は教室の枠の中から完全に抜け出しており。
その先に待つ廊下へと、両足を下ろしていたから。
そして、
?「あぁ〜オレちょっとトイレ〜…」
少々荒っぽく開けた教室の扉を閉めることもなく。
そう言い残して、私の視界からいなくなって行った。
その後は。
タッタッタッ…という、廊下を走る音だけが、私の耳に届いた。
しかし、それも徐々に小さくなり、とうとう聞こえなくなってしまった。
『は…は?は??』
この時。
私の頭にあったことは、1つだけ。
もしかして。
これって、もしかして…
嫌 わ れ た 。