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白銀の五線譜

第5章 第五章大きなワンコと変なおじさん




もう最悪だ。
冷静さを装っていたのに、顔が作れない。


「こら…止めなさい」

「もう顔も見たくない!」

「頼むから、これ以上言わないで…本当に傷つくから」

「首落ちて死ね!」


何が傷つくよ。
その何倍も傷ついた過去の私はどうなるのよ。


「お願いだから信じて…」

「この変態!」

私の腕を引き抱きしめる万は私が抵抗できないようにする。

「嫌い…万なんて大嫌い」

「ごめん、傷つけて…ここまで泣かせているなんて知らなかった」

「クソ野郎…」

「そういう言葉を使うんじゃないの」


なんて最低な男なの。
自分の都合で捨てて置いて今さらこんな慰め方。

「何で捨てたの」

「捨てたつもりはないけど…あの時はそれしかなくて」

「言ってくれれば私…私は」


私の中でまだ消化しきれない気持ちが残っていた。

それは一言も相談なく消えた万だ。


「あの後私は何処にも行き場がなかった…九条はこれ見よがしに私の元に来るし」

「は?来たのか!」

「ストーキングみたいに付きまとって来たわよ」

万が去ってすぐにあの男はストーキング同然に付きまとい、千と一緒に私にうだうだ言って来た。

「貴方を探してやるなんて見え透いた嘘をつきながら私を人質にして千を引き込もうとしていたわよ」

「そんな…」

「あの男は亡霊と同じ、千をゼロの代用品にしか考えていない。ゼロに復讐する代用品に」

「零…」

「私はあんな男の言う通りになる気はないわ。音楽を支配するような男なんて…」


九条…ゼロを失った悲しみを憎しみに代えてくるってしまった男。


春樹を恨み続けている。
あの人が悪い蓮はないのに、今でも…


「あの男はいずれ現れるわ」

これは予想でしかない。
あの男の執着心は異常だもの。


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