第5章 赤に揺れる/小さくなったその後
1時間の睡眠も、夜の1時間と比べたらだいぶスッキリする1時間だった
まさかこんな初めての場所でほぼ初対面の人の前で眠れるなんて、ちょっと沖矢さんに心を許しすぎたかもしれない
それもこれもあの煙草の香りのせいかな…とか思ってみちゃったり
「だいぶ寝ちゃったみたいで、ごめんなさい」
再び本を拾って渡すとそれをテーブルに置き、ポケットから手鏡を出してオレの顔を写す
「顔色もだいぶ良くなりましたね」
見てみると、少しスッキリした自分がいた
「すごい…こんな短時間で隈が薄くなるなんて…」
「良質な睡眠も取れたからでしょう」
沖矢さんがそうさせてくれたから、おかげさまでだよ、とニコっと笑みを飛ばしお礼を言いって玄関に向かう
「リュウ君」
靴を履いて玄関の扉を開けると、沖矢さんに初めて名前で呼ばれて振り返った
「お互いにいない人の代わりにはなれませんが、私でよければいつでも頼ってくださいね」
「ありがとうございます!また遊びに来ても良いですか?」
「えぇ、もちろん」
小さく手を振って工藤邸を出た
沖矢さんは赤井とは全く雰囲気の違う人なのにどこか重ねてしまう自分がいて、なんだかちょっぴりおかしいなと一人苦笑いをする
そんなオレが沖矢昴の秘密を知るのはそんなに遠くない未来...
━5章END━