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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第22章 落花流水 前



軽く頭を下げた三成へ頷き、身を翻した光秀が凪を迎えに行くべく店内へ入って行く。その背を見送った三成は、思案を巡らせるよう紫苑の眸を引っ立てられた男達へと向けた。


──────────────…


光秀と三成が言葉を交わしている間、一方店内へ残された家康と凪は、油で店が大火沙汰にならずに済んだ事へ改めて胸を撫で下ろしていた。

「それにしても、大事にならなくて良かったね。ここの薬草燃えちゃったら、お店の人じゃなくても悲鳴上げるとこだったよ」
「武将が三人も居て大事になったら面目丸潰れだし、絶対秀吉さん辺りに小言言われるだろうね。まあ、何事も無くて良かったんじゃない」
「小言……なんかちょっと想像出来る…」

秀吉に小言を言われる三人の図を想像し、ついくすりと笑ってしまった凪を見て、家康がむっと眉根を寄せる。指先で柔らかな頬をむに、とつまみながら半眼になった。

「……今変な事想像したでしょ」
「し、してない!」
「ふうん?」

指先で触れた凪の頬はふにふにと柔らかい。赤くならない程度の力加減で感触を楽しみつつ、必死に首を振って否定する彼女を見て、家康がどちらともつかない相槌を打った。

「と、ところで家康は何を買いに来たの?」
「え?」
「薬草屋さんに来たって事は、何か必要なもの買いに来たのかなって思って」
「……別に、何だっていいだろ」

頬をつままれる事から逃れる為、適当に持ち出した話題を凪が投げれば、一瞬虚を衝かれた家康が小さく音を溢し、指先を離した。ただの話題の一環だと分かっているにも関わらず、つい視線を逸らして憮然とした声を発する。

(…しまった、少しきつかったか)

語気や語調が強めであった事へ咄嗟に後悔を滲ませるも、音にしてしまった言葉は容易に取り消す事は出来ない。凪を傷付けてしまったか、そう案じても、取り繕う言葉を上手く出せなかった家康がちらりと視線だけを凪へ向ければ、彼女は特に気にした風もなく、少しだけ不満そうな顔をしただけだった。

「教えてくれてもいいのに」

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