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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第22章 落花流水 前



それを受けた三成も、若旦那へ丁重に頭を下げた後で光秀を追った。
表へ出た際、たまたま見廻りに出ていた秀吉の家臣達に気付き、声をかければ彼らはすぐに男達を引っ立て、少し離れた位置で控えるよう佇む。縛り上げていた縄の先を家臣達へ任せた後、光秀の元へ近付いた三成が些か真剣な様子で視線を向けた。

「光秀様」
「…三成、あの男達の尋問には注意しろ」
「どういう事でしょう?」
「先頭の男が後ろの二人へ声をかける前に、あの男は一度凪を見ていた。その理由をあらえ」

男が後ろの二人に声をかける少し前、凪の事を視界に入れていた事実を、光秀が見逃す筈がない。男は店へ怒鳴り込んで来た際、店内に三人の武将が居る事実────否、家康と三成が居る事実に面食らっていた。
つまり、光秀がその場に居る事は想定済だったらしい。みなまで告げずとも、こういった事に関する三成の頭の回転は信用と信頼が置ける。

「凪様を……承知致しました。つまり、何者かに指示された上で、彼らはあの場へやって来た可能性がある、という事ですね」
「その通り。ここに至るまでの道中、妙な視線を感じた。一度牽制し、散らしたが…なかなかしつこい虫のようだ」

それは先程、凪の唇を往来で塞いだ時の事だ。長布を直してやる素振りを見せながら、一度ぐるりと視線を投げたのは通りを歩く最中に、まとわりつくかの如く妙な気配を感じた為である。小さく笑い、肩を竦めた光秀が皮肉を投げると、それを神妙な面持ちで耳にしていた三成もそっと頷いた。

「今回の件、信長様へのご報告は」
「尋問の結果は先に俺に報せろ。その上で、俺が信長様へ直接ご報告する」
「かしこまりました。…念の為、先程家康様には彼について軽く話を通させて頂きました」

凪に関わる事であれば、信長より護衛を一任されている光秀へ話を通すのが筋だろう。そう考えた三成がすぐさまその意思を汲み取る。そうして、男達を拘束した合間、家康に若旦那の件を伝えた事を暗に知らせれば、光秀は微かに口角を持ち上げた。

「上々だ。後は頼んだぞ」
「お任せください」

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