第8章 大切で残酷な暖かい過去
13歳の時ユリスが街を気だるげに歩いていると─
「ちょっとそこの君」
ユリス
「…?」
面倒臭そうに振り向いたユリスの先には、今よりも25歳若いメディの姿があった。
ユリス
「何か…?」
メディ
「そんな面倒そうな顔をしないでくれ。私の名はメディ·リシャール。これでもゼフィランサスの最高司令官をやっていてね」
ユリス
「…はぁ…」
突然なんだ、と言いたげにユリスは相槌を打つ。
メディは彼の様子を全く気にしていないのか、笑顔で話を続ける
メディ
「君、魔法が使えるだろう」
ユリス
「…使えますけど」
メディ
「その力を少し見せてくれないか」
ユリス
「ここで?」
メディ
「いや、ここでは不味い」
そりゃそうだとユリスは思うも、あまり会話をする気がないのか隠す事もせず欠伸を零す。
だが、その様子に腹をたてる事もなくメディは提案する
メディ
「ゼフィランサスの訓練部屋で見せてくれないか」
ユリス
「はぁ…構いませんよ」
怪訝そうにしながらも、ユリスは頷いた
ユリス
「リディープル」
メディ
「ほう…素晴らしいな…」
ゼフィランサスの訓練部屋でユリスはメディに言われた通りの魔法をいくつか披露して見せた。
メディが要求した魔法は、どれも高等魔法で…それを表情も変えずに軽々とこなしてしまうユリスは大人よりも優れていた
メディは自分の勘が当たった事に満足しながらユリスに近付いた
メディ
「是非、君を私の補佐官にしたいのだが…どうかな?」
ユリス
「補佐官…。なっても良いですけど条件があります」
親御さんの許可の事かな、なんてメディは予想しながらも条件を最高司令官に出す少年の頼もしさと、生意気さに期待の笑みが零れつつも促す様に頷いて
ユリス
「補佐官は2人なんですよね。エドゥアル…俺の友人も補佐官にしてくれたらなります。そうじゃ無かったら、補佐官は別を探してください」
予想していた返事とは違う言葉にメディは驚いたものの、ユリスのどこまでも生意気な物言いに思わず笑いが吹き出てしまった
メディ
「嗚呼、構わないが…そのご友人が優秀じゃ無かったら駄目だからね」
その言葉にユリスは、自信満々に頷いて見せた