第26章 呪縛と秘密
アリシア
「レティシア…」
呼ばれたレティシアだったが、振り返る事なくその部屋を後にする。
フォンテーヌ家を出てからレティシアは、ぽろっと言葉を零す
レティシア
「自分勝手だよなぁ。…私を居ない存在として扱って、煙たがってたくせに自分が治らない病にかかったら呼び出して魔法で治せなんて。……なめんなよ、くそ」
リアム
「……こんな時まで笑ってんなよ」
レティシア
「……っ…」
今にも泣きそうな表情を浮かべながらも笑うレティシアを見て、リアムは眉尻を下げてそう告げる。リアムの指摘にレティシアは下唇を淡く噛みながら涙が零れないように上を向く
リアム
「俺が今からする事に怒んなよ?」
レティシア
「は?何を……っ…」
レティシアが問うよりも先にリアムが伸ばした腕は、彼女の後頭部に回され気が付いた時には抱き締められていた。
突然の事でレティシアは驚いたもののリアムの腕が背中にも回り、しっかりと腕に閉じ込められる
リアム
「俺…今はハンカチだから」
レティシア
「…何言ってんだ、たくっ………でも…ありがとう」
リアムの言葉に、ふっと笑ってしまったもののゆっくりと彼の背中に腕を回した。
きっと、傍に誰かが居なかったら耐えられなかったあの空間…だが、リアムが居てくれた事により耐えられた。
結局、レティシアの中では母は苦手な存在のまま変わる事はなかった
一生、変わる事はない。
その日、酷く精神的に疲れたレティシアは早めに仕事を切り上げ、ジルヴァをしっかりと抱き締めて眠りについた。