第21章 対象者の壁となれ
翌日─…
レティシア
「良いか、もう一度確認するぞ」
出発する前にレティシアがリアムとルシアンを見ながら声を上げる。
レティシア
「今回の護衛対象はドレイク·デイサン。大きな発言力を持った資産家だ。んで、今日行われる会合でそいつのお墨付きとやらが欲しい奴等が集まる場所に行かせたくねぇ奴が脅迫状を送ったが…屈せず向かうっつーわけだ。…ったく、魔法使いに頼るなら向かうんじゃねぇよ」
リアム
「最後、思いっ切り確認じゃねぇし」
腰に手を当てながら面倒くさそうに吐き出すレティシアの相変わらずな様子にリアムは苦笑する。
その姿を見ているだけで少し緊張が解れる気がした。
ルシアン
「レティシア。そろそろ出る時間だ」
レティシア
「よし、行くか」
リアム
「おうっ」
特別室から3人が出ようとするとノア達が行ってらっしゃい、と声を掛けそれに応えてから3人は特別室を出て行く。
レティシア
「ジル。今日は留守番だって言わなかったか?」
目的地が近い為3人は歩いて向かう事にし、その道中で彼女の後ろを当たり前のようにちょこちょことついてくるジルヴァに向かって、レティシアは歩きながら言葉を吐き出す。
だがジルヴァは、その言葉が聞こえない振りをしてすまし顔で歩いている
その様子をレティシアは、ちらりと視線を落として見ると…たくっと溜め息混じりに吐き出すだけで、それ以上は何も言わない。
ルシアン
「あれか」
暫く歩くと日を反射する程に手入れされた黒塗りの大きな車が見え、ルシアンが言葉を発する。
その車の横には対象者ではなく黒のスーツを身に纏った長身の男と長い髪を一つに束ねた女が立っていた。2人は3人に気が付くとお辞儀をした
ランナ
「本日、共に行動をさせていただくランナです」
キール
「同じくキールです。宜しくお願いします」
リアム
「あ、はい!リアムです。こちらこそ宜しくお願いします!」
丁寧に名乗る彼等に倣うようにリアムは慌ててお辞儀をしながら挨拶をする。その後に続いてレティシアとルシアンも自身の名を述べる。