第21章 対象者の壁となれ
フェリックスの話を聞き終えたレティシアは、戸惑い視線を揺らす。
レティシア
「んな事、急に言われたって…」
フェリックス
「困らせてしまってすまない。だが知っていて欲しかった。…俺の気持ちと両親の心配が本物だという事を」
レティシア
「………」
フェリックス
「…レティシア」
レティシア
「分かったよ。…その話を信じる。まぁ、何だ…その……ありがとな」
完璧に信じる事は無理でも嘘では無い事を感じ取ったレティシアは、腕を組み顔を逸らしながら気まずそうに礼を述べる。彼女の頬が僅かに染まっていれば…フェリックスはどうしようもなく嬉しくなる。
フェリックス
「レティシア…」
レティシア
「ばっ…寄るな、あほ!」
思わずレティシアを抱き締めようと近付いたフェリックスを見て、彼女は驚きつつ手で制する。
少しだが2人の距離が縮まった。フェリックスは彼女の前でだけは表情が緩くなるようだ
その後、話が終わったのを見計らって入室してきたルシアンとリアムを混ぜた4人で護衛任務について詳細を話し合った
レティシアとフェリックスのほんの僅かな変化にリアムは小さな焦りの様なものを感じていたが、初めての護衛任務という事もあり…気を引き締めて会話に参加する事が出来た。
話が纏まりその場は解散となった。
護衛任務が他の者よりも多いルシアンは落ち着いたものだが、初めてのリアムは今からシミュレーションを脳内で繰り返すのだった。
護衛が苦手だと言っていたレティシアは特に何か思う様子もなく普段通り過ごしている