第18章 揺るがない物をくれた君
ノア
「オレ─」
「ああ!こんな所に…!」
ノアが返事をしようとした瞬間、息を乱して走って来た男によってそれを遮られる。
膝に両手をついて肩で息をしている男をフェリックスは見下ろしてから、ノアへ視線を戻す
フェリックス
「考えておいてくれ。…大丈夫か?ほら、行くぞ」
「はぁ、はぁ…っ…大丈夫って…そもそも、坊ちゃんが…!」
フェリックス
「坊ちゃんは止めろと言ってるだろう」
言い合いをしながらもノアへ背を向けて歩いていく2人を見て、嵐の様な展開に戸惑ったものの…彼の中では考えるまでもなく答えが出ているのだ。
ノア
「あの!」
フェリックス
「?」
声を張り上げてノアが呼び止めると、フェリックスと執事らしき男は振り向く。
ノアは、ぐっと拳を握りしめてフェリックスを見詰め
ノア
「オレを部下にして下さい!お願いします!」
ばっと音が聞こえそうな勢いで頭を下げたノアを見て執事らしき男はきょとんとしたものの、フェリックスは気怠げな瞳をふっと細めてノアに向き直る
フェリックス
「勿論だ。宜しくな」
顔を上げたノアはその優しい笑みと、差し出された手の力強さを感じ誘ってくれた彼の為にも全力で格好良い守護官になろう、と決めるのだった。
その翌日ノアはアクアマリンに所属する事になり、アイリス基地に配属され…無事フェリックスの部下として念願の守護官になった。
夢であった守護官になれた事に未だ夢見心地であったノアに衝撃の言葉がフェリックスからぶつけられた
ノア
「え!?…オレが指揮官補佐 兼 指揮官代理!?」
フェリックス
「嗚呼。そこは中々、決まらなくてな。お前なら任せられる」
出会って2日の自分を何故そこまで信頼出来るのかノアには不思議でしか無かった。
だが、彼は自分では無い。
もしかしたら彼の視界には自分には見えないものがあって、自分が信頼しても良い存在だと見えているのなら…プレッシャーはあるものの、やってみたい。彼の力になりたい、そう思った
ノア
「期待に応えられるよう、頑張ります!」
フェリックス
「嗚呼。宜しくな」
その日からノアはフェリックスと常に行動を共にし色々な物を吸収し、素質が良かった彼は1人で練習している時よりも能力はぐんと向上した