第16章 正体
そうしているうちに剣を振り上げたレティシアが、思い切り男の首を狙って振り下ろす
リアム
「やめろぉっ!」
─キンッ
「……?」
レティシア
「…望み通りになると思うなよ?罪から逃げるな、生きて詫び続けろ。クソ野郎が」
リアム
「ぁ…」
レティシアが振り下ろした剣は地面にぶつかっただけで男の首を刎ねてはいなかった。
気が抜けたリアムが見上げるとそこには、先程までの取り乱していたレティシアは居らず普段通りの彼女が居た
レティシア
「おい、本当に私が首を刎ねると思ったのか?」
リアム
「あれは誰が見ても思うだろ…」
ふんっと鼻を鳴らしながらレティシアは顔を背ける。
フェリックス
「連れて行け」
部下
「はっ!」
フェリックスの低く落ち着いた声が告げた言葉に反応した彼の部下達が、未だ地面に押さえ付けられている男を連れて行く。
立ち上がったリアムとノアは、ふぅっと息を吐き出す
フェリックス
「久し振りだな、ノア」
ノア
「お久し振りです、フェリックスさん」
声を掛けられたノアはフェリックスに向かって1度、敬礼をする。
久し振り、とはどういう事だろうかとリアムは疑問に思ったが後で聞こうと今は胸の内にしまった
ルシアン
「…墓…作ってやるからな」
レティシア
「………」
倒れている人獣に向かってそう告げている2人の後ろには、いつの間にかリアムとノア、フェリックスが立っていた。
シモン
「大変だったね。…上に立つものはいつだって、下の者が自由に動けるように責任を取らなくてはならない。だから、君達のやり方で好きにやってくれ」
任務を終えた後ジルヴァをオリヴィアに預けたレティシアとルシアン、ノアにリアムはルビー基地の指揮官長室に居た。
目の前で柔らかく笑むシモンに4人がお辞儀をして部屋を出ると…
シモン
「くそ…失敗しやがって。……私だ。作戦は失敗だ…次の人獣は…まだ?早くしてくれ…」
レティシア
「やっぱり、あんたも変わっちまったんだな」
シモン
「……なっ…」
どこかに電話をしているシモンの前に、部屋を出た筈の4人がシモンの前に立っており彼は慌てて電話を切る