第15章 人か獣か
休憩室のカフェに着くと2人は向かい合って座った。
レティシアの前にはショートケーキとミルクティーが置いてあり、お礼を述べてからそれに手をつける。
ケーキを食べる少女を見ながら、シモンはコーヒーを啜る
シモン
「レティシアくんは、何故ユリスくんに用があったんだい?」
不意に問われたそれにレティシアはケーキを喉の奥へ流してから、シモンへ紫の瞳を向ける
レティシア
「良く嫌な事、言われるから…それで少し悲しい気持ちになる。でも、ユリスに会うと嬉しい方が強くなるから会いに行ったの」
その少女の言葉にシモンは口元に手を添えて優しく笑む
シモン
「そうか。ユリスくんが早く帰ってくると良いね」
レティシア
「うん。でも、シモンに会えたから少し元気出た」
予想していなかった言葉にシモンの目が僅かに丸くなる。
が、すぐに上品な笑みを浮かべて少女の頭を優しく撫でてやる
───── ╴╴
レティシア
「あの人は…本当に変わっちまったな」
巡らせた思い出に終点が来て意識を戻したレティシアは、ふっと鼻で小さく笑みを零してから、すっかり冷めてしまったコーヒーに口をつける。
いつからだっただろうか…そう考えるが、すぐに思い当たる
レティシア
(私に指揮官長の話が来た時…か)
あれ以来シモンからレティシアに関わってくる事は無くなった。
彼女が声を掛ければ変わらず笑みを向けるものの、その奥にあるものにレティシアは違和感を抱くようになっていたのだ
それ以上考えるのが面倒臭くなったレティシアは息と共にそれを吐き出し、キーボードに置いた手を動かし始める
液晶に連なっている文字を眺めながら、どう攻めるのか悩んでいたレティシアの口元が、ニヤリと歪んだ
レティシア
(本人にだけ不利な物なら…被害も少ねぇか)
そんな事を思っているレティシアのデスクに近いルシアンがそれに気付く
ルシアン
(また悪い事、考えてるな)
呆れる様にレティシアを見るも、すぐに視線を自分の液晶に戻して報告書作成に集中する