第15章 人か獣か
話が纏まり各自、報告書を作成したり何かを調べたりとしている最中…レティシアは自身のデスクで片方の手に顎を預け幼かった、とある日へと思いを馳せていた
それは、レティシアを良く思わない者からの言葉に内心で傷つき、ユリスの元へ行く様になった頃の事─…
また心の無い事を言われ、その場では言い返したものの幼い心は傷付きユリスに会う為にゼフィランサスに訪れた
部下
「お、レティシア。ユリス補佐官に会いに来たのか?」
1人がレティシアに近付いて目線を合わせるようにしゃがむ。
少女は唇を結びながら小さく頷く
部下
「丁度、補佐官は任務中なんだ」
その事実に少女は分かりやすく落ち込む。
下がる眉を見たユリスの部下は、少女と同じ様に眉を下げて笑みながら頭を撫でてやろうとする…が、それよりも先に誰かの手が少女の金の髪の上に乗った。
突然の重みにレティシアが顔を上げると、そこには紳士的な雰囲気を持つシモンが目を細めて少女を見ていた
シモン
「私もユリスくんに用があったが…そうか、不在か」
部下
「シモン指揮官もですか。補佐官が帰ってきたら伝えておきましょうか?」
シモンの登場により、ゆっくりと立ち上がった部下が首を傾げる
シモン
「いや、今は特に急ぎの任務も無いからね。レティシアくんと待つ事にするよ」
部下
「そうですか?」
シモン
「嗚呼。彼女とデートしてくるよ」
部下
「ははっ、そんな事ユリス補佐官に聞かれたら文句言われますよ」
シモン
「彼はレティシアくんを大事にしているからね。…カフェに居るとユリスくんが帰って来たら伝えておくれ」
部下
「分かりました。…レティシア、またな」
シモン
「行こうか、レティシアくん」
レティシア
「うん」
少女は頭上でかわされる会話に耳を傾けつつも未だユリスの不在に落ち込んでいた。
だが、シモンに声掛けられると彼を見上げ頷き差し出された手に幼い手を重ねる。そして、ひらひらと手を挙げている部下に手を振り返した
レティシア
(ユリスみたいに大きな手だけど…少し、カサカサしてる)
大きく包容力のあるシモンと手を繋ぎながらレティシアはそんな事を思う。
少女にとってそのカサカサした手は嫌ではなかった