第15章 人か獣か
最小限の照明しかない特別室に1つの人影が液晶に映る存在を眉間にシワを刻んで見ながら顎に手を添えている
ルシアン
「やっぱりここに居たか」
ことん、と小さな音を立てて机の上に湯気がたつコーヒーが置かれる。
見ていた液晶からレティシアは視線を外してルシアンを見る
レティシア
「ありがとう」
ルシアン
「毒食らって体力消耗してんだから休めって言ったろ。しかも今は勤務時間外だ」
レティシア
「もう平気だ」
リェグンゼに切りつけられ倒した後、気を失っていたレティシアは仕事はせずに部屋で休めと言われ最初はそれに従った。
だが、どうしても気になる事があり勤務時間外に特別室で液晶を眺めていたのをルシアンにバレ、今の会話に至る
ルシアン
「またそれ見てんのか」
自分の椅子をレティシアの隣に転がし、ルシアンはそれに腰を下ろした。
彼女の液晶を覗き込むとそこには先日リアムを除いた特別室メンバーで見ていた、人の様にも獣の様にも見えるぼやけた黒い影が映っていた。
レティシアはこれが何なのか分からず、ずっとモヤモヤしていた。
何かは分からないのに妙なザワつきが胸を支配していて落ち着かなかったのだ
レティシア
「パッと見は人間なのに、良く見ると獣にも見えるんだ。…気になって仕方がない」
ルシアン
「分からなくはないが…今じゃなくても良いだろ」
レティシア
「そうだが…落ち着かないんだ。焦燥感みたいなもんが凄くて」
眉間にシワを刻み組んだ自身の両手に額を預けるレティシアを見てルシアンは肩に優しく手を置く
ルシアン
「普段の任務と併用して、その事も少しずつ調査してみれば良いだろ」
レティシア
「そうだな…」
ルシアン
「勿論、お前1人でって意味じゃないからな」
レティシア
「…ふっ、リアムの頼れってやつの事言ってんのか?」
顔は手で隠れたままだが、ルシアンの言葉の内側を読み取りレティシアは笑みを零す