第10章 他を守る者へ
何度も叱られる程には身体を張り過ぎている彼女を見て、人を守ろうと必死なんだとリアムは思う。
と同時に時々、浮かぶ憧れの存在…その人物とレティシアは、何度も重なる。
だが、その時の状況もあってか上手く思い出せない…というより、記憶がこんがらがっているのだ。
レティシア
「おい、どうした」
ノア
「ぼーっとしてるよ」
紫と黄緑の瞳に覗き込まれればリアムは慌てて首を左右に振る。
リアム
「本当オリヴィアさんのおかげで傷が残らなくて助かりました」
オリヴィア
「良いのよ。これが私の仕事だからね」
服を着替える前に鏡で背中を確認すると、そこには傷なんて存在しなかった。
その事に感動したリアムは何度も確認してしまう
リアム
「そういえば、あの子は?」
オリヴィアと衛生室から出ながらリアムはレティシアに問う。
レティシア
「さっき帰った。あんたに感謝してたぞ」
リアム
「感謝…?」
レティシア
「嗚呼。息子を助けてくれてありがとう、ってな」
パソコンから、ちらっと視線を上げたレティシアが片方の口角のみで笑うとリアムは、その言葉を噛み締めるようにして口元に笑みを浮かべる。
レティシア
「身体は治っても体力が元通りなわけじゃねぇからな。今日は早めに上がれ」
リアム
「いや、でも」
レティシア
「でも、じゃねぇ。これは命令だ。…なんならジルに頼んで引き摺って部屋に戻してやっても良いんだぞ?」
その言葉にジルヴァが、リアムの脚元に駆けてきてやる気満々に羽を揺らす。
リアム
「じ、自分で戻りマス」
レティシア
「宜しい。…しっかり休めよ」
リアム
「おう。…じゃお先に失礼します」
リアムが全員に声を掛けると各々の反応が返ってきた。
引き摺りはしないものの監視のつもりなのか、見送りのつもりなのかジルヴァがリアムの部屋まで付き添った