第8章 大切で残酷な暖かい過去
レティシア
「ユリス…あんたが居なくなったら、私…っ…くそ、誰が治癒出来ないようにしたんだよ…」
彼が亡くなってしまった今、レティシアの疑問に答えてくれる者は誰も居なかった。
レティシアは、ユリスの首からロケットペンダントを取ると自分の首にかけた
涙を拭ったレティシアの瞳には怒りと殺意がこもっていた
レティシア
「ジル…誰も来ないように、ここでユリスを見てて」
ジルヴァ
「にゃ…!」
理解したジルヴァを確認したレティシアは、ゼフィランサスへ向かい第一室の扉を強く開く。
その音に驚いたユリスの部下達は振り向く。
部下1
「レティシア…?」
幼い頃からレティシアに良くしてくれていた人達は殺気を纏い、頬と服が血に濡れている彼女の姿に驚き思わず呟く。
だが、それに反応する事も無くレティシアは声を張り上げ
レティシア
「誰だ…。誰がユリスを殺した!!」
部下1
「え…ユリス…補佐官、が…?」
レティシアは視線を滑らせ、一人の男に近付いて行く
レティシア
「……お前だな」
部下2
「……っ…」
男はレティシアの殺気に息を呑む。
その人物は彼女が14歳の頃ユリスに跨ったままだった男だ。
あの頃とは違うレティシアからの視線や殺意に思わず唇を震わせながらも、言葉を吐き出す
部下2
「た、例えそうでも…犯罪者が1人居なくなった、所で…」
男の言葉にレティシアは目を更に鋭くして掌を向ける
レティシア
「殺してやる!!…フィピテオ!」
部下2
「くっ…!」
レティシアが叫ぶ様に呪文を唱えると魔法で男の首を絞め宙に浮かせる。
息が出来ず苦しい男は表情を歪め、浮き上がった脚をばたつかせる。
部下1
「ばっ…レティシア、やめろ!」
それを見て慌てた人達がレティシアを止めようと彼女へ向かうが、振り向かず左手だけを向け呪文を唱え全員を縄で縛り近付かせない
レティシア
「ユリスは!冤罪だっただろ!!」
部下2
「ぐ…っ…ぅ」
男は失いそうになる意識を何とか保って、魔法から逃れようともがく。
だが、怒りに操られたレティシアの魔法から逃れられるわけもなく