第10章 ※シャボンディ諸島
「………で、おい、ユースタス屋、てめェ…分かってんだろうな」
殺気がローの周りに帯びる。
「おいおい、勘弁してくれよ。からかおうとしただけだぜ?」
離れたところにいるキッドが声を張り上げた。
だんだんこっちに近付いてくる。
「…本当か、お前」
「……“何故顔を隠している、フード取れ”って、言われた…」
「っ‼︎」
…危ないところだった。
もしも、ベポが真鈴の事態に気がついていなかったら、どうなっていただろうか…
ゾワリ、と背中に寒気がはしった。
(アイツ…やっぱりこいつを疑ってやがる…‼︎)
「…ユースタス屋、この同盟は破棄だ。帰れ。」
「……あ”? 何故だ?」
何故かと言われたら、この女に近付いて欲しくないからなのだが、そんなことを言うと、ますます疑われるかもしれない。
…ローが‘‘清者’’を連れ去ったと。
「なんだ? やっぱりてめェがあの女を」
「…ちげェって言ってんだろうが。」
「……。遠回しに言うのイライラしてきたから、もうハッキリ言うぜ。…その女……‘‘清者”だろ?」
『‼︎!』
ベポも真鈴も顔が軽く引きつった。
「ちげェつってんだろ。」
「じゃあ何でフードかぶっている? 店の中でも…‼︎」
「それは…」
真鈴はローの腕の中で身動ぎした。
(ロー…これ以上、どう言い訳するのよ…‼︎)
唾を飲み込む。
ローがくちを開いた。
「…さっき言わなかったか? こいつは極度の人見知りだと。」
ーこいつ(キッド)を騙せる自信は、ある。
「そんなにひどい人見知りなのか?」
「あぁ。その上、恥ずかしがり屋だ。」
「…お前、そいつの顔を見たことは」
「一回きりだ。…それ以来見てねェ」
ローは吐き捨てるように言った。
キッドが疑いの目を真鈴に向ける。
「…まぁいい。分かったよ、そいつは違うんだな?」
「あぁ。…今すぐフードを外して見せた方が早いが、そうすると俺が嫌われてしまうからな。」
「‼︎」
フードを外して、の辺りで真鈴は両手でフードを下に引っ張った。
…ますます顔が見えなくなった。
「しねェって…そんなこと…」
真鈴の顔の近くで囁く。
「(俺の話に合わせろ。)」
早口で小さく、キッドに分からないように言った。
「…。」
真鈴は小さく頷いた。