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dcst 夢小説 短編まとめ

第2章 【羽京】東の姫君とお見合い


「東宮院家…ですか」
僕ーー西園寺羽京はなるべく表情を変えずに言った。

目の前には僕の父と祖父。西園寺家は所謂歴史あるお金持ちーー有り体に言ってしまえば僕は「いいとこの坊ちゃん」だった。

縁談話は「まだ若い」「今は仕事に専念したい」等と引き伸ばし引き伸ばし、とにかく断って来たが…まさかあの、東宮院家との縁談が来るとは。
正直、あそこからは絶対に来ないと思っていたのに。
参ったな…というのが第一印象だった。

東宮院家は格式の問題で言えば、向こうも歴史が長くほぼ同格だから、断る理由にならない。
唯一断れるならやはり両家の『確執』だろう。

「あの…」僕が指摘する前に、祖父が嬉々として口を開く。

「あそこの家自体は気に食わんが……。
向こうに一度だけ、と請われて会った限りでは、孫娘は随分と殊勝だ。学術に秀でて才色兼備、気立ても良いし謙虚だ。アメリカに1人で渡米して18歳で飛び級して大学卒業。

今は日本に帰国して、医者を目指して実力を研磨、遺憾無くその才を発揮しておるらしい。英語も堪能で、お前と年齢も同じ位だ。相性も良かろう。
ーー向こうから擦り寄って来たのだ、お前に合わせるなら、これくらいのやつがいいだろう」

「…そうですか」その場限りの笑顔を作る。飛び級って…相当頭がいいんじゃ。そんな人と僕みたいな一人のソナーマンが引き合わされるとは。

今度は父さんが口を開く。祖父より慎重かつ東宮院家に因縁のある父さんなら何かフォローが…



「一度、会えば分かる」

フォローじゃなくてトドメを刺された。

武に長けた西園寺と、知に長けた東宮院。西と名がついてはいるが東日本に居を構える僕の家と、東とつきながら西日本に居を構える東宮院。

両家には、長い数百年の確執がある。お互いに事業の邪魔をしたり罵る等は平気でやっていた。
だから僕はそんなのとは無関係で居たかった。武術の家柄の体面も保てる閉鎖的な環境の自衛隊で心穏やかにやりたかったのだがーー

今回の縁談話は、その和睦の様な物だ。
仕方ない、一度だけ会って「お相手が素晴らし過ぎて僕とは釣り合いません」とでも言うしかない。
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