第6章 雪山に轟く
翌朝、私たちは予定通り連れ立ってションリ山に出発した。山の麓に到着し、その頂を見上げる。ごつごつとした岩と固い雪に覆われたその山肌は生き物の気配を全く感じさせない。
「登るのにも一苦労しそうね。」
「お前はどうせキリンに乗るだろうが。」
「よくご存じで。」
「…。」
モンスター達にばかり頼るのは好きじゃないが、この山を自力で登るのは流石にごめんだった。ここはキリンに乗せてもらおう。
私の気持ちが分かったのかキリンは既に隣で四肢を折ってこちらをじっと見ている。なんて賢い子なんだろう。一応ダメ元で聞いてみる。
「ねぇ、ラクサスも一緒になんてことは…?」
その途端鬣がバチバチと放電を始める。
「だそうよ。」
「フン、俺はそんなにヤワじゃねぇ。さっさと乗れ。」
そう鼻を鳴らすとくるりと身を翻し、コートをはためかせてずんずん歩いていく。彼に遅れないように放電し終えたキリンの背に跨る。
「流石にここは…降りましょうか。」
「だな。」
目の前に立ちはだかるのは垂直に近い崖。所々に人一人がやっと足を掛けられそうな段差がある。20メートルほど登ったところに大きく開けた場所がありそうだ。そこから異様な気配がする。奇妙なことに、ブルム集落に向かうまでにあんなに行く手を塞いできたはずなのに、ここに来るまで魔物には一匹も会っていない。
「ありがとう、先に上に登っていて?」
ブルルと鼻を鳴らすとキリンは持ち前の脚力で難なく20メートル上方へと駆け上がって行く。あの背中にしがみ付いていることなど到底不可能だろう。
「先に行け。」
「あら、落ちたら巻き添え食らうわよ?」
「お前一人が落ちてきてもどうってことねぇ。」
「先に言っておくわ、ありがと。」
「オイ、わざと落ちていいとは言ってねぇぞ。」
「分かってるって。」
そう言いながらも私はゴールまでのルートを考えていた。何せ上っている途中でゆっくり休めるようなところはない。登る順番を間違えるわけにはいかないのだ。なぜならもう一度降りて登ることになったら疲れるから。