第6章 雪山に轟く
「まぁまぁ、かけてくれ。ラベンダーティーを淹れよう。」
そう言ってダイニングを示し、自分はキッチンへと入っていく。ややあってダイニングから現れたウバリさんはティーセットを持っていた。どうやらこの集落はラベンダーの生産で有名らしく、ラベンダーの育たない季節はこうやって加工製品の販売に力を入れているらしいのだ。
ウバリさんの淹れてくれたラベンダーティーは私の舌を大いに魅了した。そんな私の興奮を感じ取ったのか、彼は報酬にこのラベンダーティーの茶葉を上乗せしてくれると言ってくれた。
「…ここに来るまでに魔物の群れに襲撃されなかったかな?」
「ええ、されました。どの群れの魔物も何者かに操られているような動きでした。」
「そう。本来ならば魔物はその本能故に松明の火を怖がる。だから集落の堀周辺には松明を設置したのだが、効果は殆どない。」
「それで異変を感じられて依頼を出されたのですね。」
「ああ、集落の中には300人余りの住人がいる。彼らを危険に晒すようなことだけは避けなければならない。」
「ご英断です。恐らく魔物たちを操っている黒幕がいると思われます。ただ一つ問題なのは目的がはっきりしていないことです。」
「魔物は集落の周りをうろついてるだけなんだろ?それがどうもきな臭ぇな。」
「そうだ。堀を無理やり破って来るでもなく、まるでこの集落の動きを監視しているみたいだ。」
「どちらにせよ、私とラクサスで明日ションリ山に向かってみます。この標高にある集落を一望できるのはあの山しかありませんから。」
「ああ、よろしく頼むよ。」
「邪魔したな。行くぞ、クレア。」
また一人だけさっさと立ち上がって行ってしまう。慌てて椅子を引き、ウバリさんに軽く挨拶をして彼の後を追う。
ウバリさんの家を出ると集落の外で鳴いているのだろうか、狼の遠吠えが聞こえた。