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SketchBook【R18】

第14章 Sketch5 --朝凪のくちづけ



今年も彼に会えると急く気持ちは私の中で変わらない。

歩道から見下ろして彼を見付けるたびに胸が高鳴り始めたのはいつからだろう?



「……綾乃」


薄い橙色の輪郭線が彼を縁どって、私は目を細めてしまう。

一方、彼がいつも眩しそうに私を見るのは朝陽のせい。


「……この辺とか?」

「…………」


自然に伸ばされた指先が私の胸の膨らみを差す。

触れられてもいないのに、私の顔が熱くなった。


「……どこ置いてきた? リアクション」

「…………」


「去年辺り…一昨年か。 ……そんくらいまではギャーギャー騒いでたのに」

「そ……うだっけ」


「は…」


セクハラじじい、とかな。 その時の事を思い出したのか、彼が歯を見せて軽く笑う。

覚えてる。

それは私が中学二年の時。


そして私は18になった。



……私ばっかりが覚えてる。



「どーした。 色気付きやがって…やっと男でも出来たか」


いつもみたいに私の頭に手を置こうとして、思い直した様に彼がすっとそれを引っ込めた。


タクマさんは段々と私に触れなくなった。


「出来ないよ。 だって私は…タクマさんが好きだから」


「……まだそんな事言ってんの」



毎年言ってる。


そっか。

そりゃありがと。

ふうん。


毎年言われる。



「タクマさん……?」


彼は私を見もせずに、また視線を波へと投げた。


「綾乃……止めとけ」





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