第12章 悪いゲンガー(中)
俺が群れる生物に近寄るのは
必然ともいえた。
その中で馴染めずに弱っていくヤツを
見つける度に食べてきたんだ。
だから腹を空かすことも珍しい。
ただ、その例外がレナだった。
アイツはフワフワした不安を持っていて
好ましかったり憎らしかったりする。
群れに馴染めないくせに、
不安がある時もない時もある。
そうして食べ頃を待って
食いあぐねているうちに、
食べるのが惜しくなっていた。
自分が憎んで不安だと感じるもの、
それを前にして不快感がない訳がない。
だから俺は必ずソイツが
死んでしまいたくなるのを待つ。
憎しみが暖まった頃合いが
1番不安がなくて美味い。
悪いゲンガーとはなんだろうか。
俺は悪いゲンガーなのだろうか、
殺してしまいたいのに殺したくないのは
レナが俺に向ける感情と
本当に同じと言って良いんだろうか。
少なくとも俺は、レナから
自分への殺意を感じた事がなかった。