第4章 #03 掠れた夢
「眠れないのか」
『……弔さん』
カウンターでオレンジジュースを飲むわたしに弔さんは優しく話しかけてきた。
弔さんは自分の飲み物を用意することなく、わたしの隣に座った。
雄英に乗り込む決意をした、わたしの不安を取り除くかのように。
『弔さんも、眠れませんか?』
「別に眠れなくはないが」
『…心配してくれてますか?』
「少しはな」
『わたし、オールマイトの情報掴むために雄英乗り込んだのだって、後悔してません。弔さんの役に立てたのなら、それでいいんです』
「……あとはお前が、どう感じるかだ」
赤い瞳がわたしを見据える。
その瞳から、やはりわたしは逃れられない。
弔さんの手には、いつもの身につけている手が握られていた。
それをそっとわたしの顔へ取り付けた。
「俺は、お前を信じてる。裏切りもしない。俺が、そばにいてやる」
【 大丈夫、僕がいる 】
いつかの少年が、悪のヒーローに告げられた救いの言葉。
いつかの少女が、悪のヒーローに告げられた救いの言葉。
それを今、目の前のわたしのヒーローが告げている。
『わたしの個性で、弔さんの役に立ちたいです。それだけです。それだけがわたしのーーーー』
生きがいだから。
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