第3章 #02 ようこそ
片目から、ぼろぼろと涙が流れていく。
身体中が小刻みに震えている。
自分が何を思ったのかさえ分からなかった。
ただ、自分が殺人者になっているのは分かった。
なぜ?
両親を殺したのはヒーローなのに、
なんでわたしが悪いことになっているの?
視界から、光が失われていく気がした。
世界から、色が消えていく気がした。
「これが、今の社会だ」
赤い瞳がこちらをじっと見つめている。
弔さんは、両手でわたしの頬にそっと触れ、顔を上げさせた。
もうわたしの顔は涙でグチャクチャなのに。
「ヒーロー中心の社会。
ヒーローはもう社会の頂点にいるんだ。
ヒーローがしたことは他が為ならなんでも許される。
誰かを殺すことさえ、敵のせいにできる。
全てを敵のせいにされる。皮肉だろう?」
真っ直ぐな瞳から、わたしは逃れられなかった。
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