第5章 犬、時々虎。Ⅱ
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体重約80Kgが上にいるのだ。
重たいに決まっている。
「あ、ごめん」
そう言って私の横に来たと思ったら
自然に腕枕をされた。
そして悠仁の方へ引き寄せられる。
そこまで大きくは見えないけど
こうも簡単に引き寄せられて悠仁の
胸の中にいるとやっぱり男の人だと思う。
「……眠い、このまま、寝てもいい?」
「ん、いいけど……着替えとか大丈夫?」
「明日……考える…おやすみ」
そう言って悠仁は寝てしまったのだろう。
横で規則正しい寝息が聞こえてきた。
私も、寝よう。
多分野薔薇に聞こえてただろうな、とか。
明日悠仁が部屋から出て先輩とかと
遭遇したらどうしてやって逃げよう、とか。
色々あるけど、今は眠い。
未来の悩みを言ってもキリがないので
今はこの幸せを噛みしめながら
眠りにつく事にしよう。
「悠仁、好き」
聞こえてないだろうけど。
私はそう言って重たい瞼を閉じた。
end